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社会問題としての廃棄物問題

廃棄物処理法の制定によって,産業廃棄物と一般廃棄物とに分類され,それらの処理責任などが 明確になったが,これは新たな位置づけであったため,その処理実態を的確に把握する仕組みが不 十分となり,産業廃棄物の不法投棄などの違法行為が生じてしまった。例えば,昭和50年夏には, 東京都内の重クロム酸ソーダ等六価クロム化合物製造工場における有害物質の埋立て処分に伴う周 辺の環境汚染が,住民の健康被害の恐れを生じさせた。ここから,他地域でも同様の汚染の可能性 が発覚し,当時は大きな社会問題となった。また一般廃棄物に関しては,全ての地域で十分な処理 能力が確保出来ない状況下で,公害問題による環境汚染への人々の関心が高まり,一般廃棄物の処 分について発生した地域内で処理すべきであるという自区域内処理の考え方が広まった。そのため, 最終処分場を持っていない自治体と,一般廃棄物の搬入を阻止しようとする自治体の間での紛争が 生じてしまった。 このように,新たな廃棄物処理制度の下で,社会問題として注目を浴びるほどに廃棄物問題は更 なる深刻化を増し,それに対応すべく廃棄物適正処理のための各種基準などが策定され,廃棄物処 理制度の整備が進められた。昭和51年には,廃棄物処理法の改正が行われ,排出事業者・処理業者 の確実な責任の遂行や最終処分を確保する観点からの規制強化がなされた。そして,翌年には, 「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」が公布 され,廃棄物の内容に応じて,遮断型,安定型,管理型の3類型を最終処分場の方式として定め, 各類型に応じた構造・維持管理上の基準が設定された。 以上のように廃棄物処理制度の整備は進められてきたが,当時の廃棄物処理制度は,廃棄物の発 生量に応じた収集能力の向上,廃棄物の減量化・減容化等を目的とした中間処理施設の整備や廃棄 物の内容に応じた最終処分場の建設を通じた処理能力の拡充を中心的に進めてきた。つまり,当時の廃棄物処理制度は,廃棄物の発生量や廃棄物の質の変化自体に対しては具体的な策を講じずに, 多様な質を持ち大量に発生した廃棄物を適正に処理することにのみ焦点を当ててきたといえる。 廃棄物問題とそれに係る法制度の状況から,戦後からバブル期後まで の経済における物そして廃棄物の流れをまとめたのが,表1である。表において,資源利用から生 産そして消費への流れは経済における物の動きを示している。これは,事業者が原油や鉄などの資 源を利用して生産活動を行い,消費者と物を取引していることを示している。そして,事業者によ る廃棄物である産業廃棄物と消費者から生じる一般廃棄物とが経済における廃棄物の発生量とな り,そこから分別収集・運搬,中間処理そして最終処分への流れが廃棄物の動きである。

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