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ごみ処理広域化の問題点

現在も厚生労働省はごみの広域処理を進めており、複数の自治体が共同で大規模な焼却施設を運営して処理を行うことが増えている。建設費や維持管理費も節約になる上、自治体によってはダイオキシンの規制値のために使用不可能になった焼却施設もあるからだ。もともとごみ処理行政は広域行政組合によって行われ、多くの場合市町村単位ではなく幾つかの自治体が集まってひとつの焼却施設を運営してきた。ごみ焼却施設の建設および維持運営には莫大な費用(コスト)がかかり、一つの自治体でこれをまかなうのは難しいからだ。 しかし、広域化には限界があり、一定以上の規模の広域化には無理が生じる。例えば生ごみはあまり広域化すると衛生面に問題がある。またごみを一ヵ所に集めるにはそれだけ輸送費(経費)がかかる。ごみ収集車が集めたごみを長距離輸送するとなると、相当の燃料が必要になり、車の台数も確保が大変である。ごみ処理広域化はダイオキシン対策の点から有効である。しかし、広域化することへの問題点も多く指摘されている。 第一にごみ減量、削減への意識を衰退させることである。ごみを自地域内で処理することはごみに対する責任を持たせることにつながる。ごみが他地域に行ってしまうのであれば、地域の環境には何の悪影響もないため、自己責任の原則が貫徹されず、ごみに対する意識が低下するのは当然である。また範囲が広すぎるので住民参加のシステムが採用しにくい。行政に処理を任せきりになるということが増えていくだろう。広域化でさらに熱回収を進めることはサーマルリサイクルをマテリアルリサイクルよりも優先させることになる。つまり焼却主義からの脱却が見られない。焼却処理によって発生する毒物はダイオキシンだけではない上、未発見の毒物がある可能性もあり、焼却に大きく頼ることは問題があると思われる。 第二に先述したように輸送コストがかかる。ごみの運搬は毎日必要であり、しかも大量であるので、輸送費は相当額になることを覚悟しなければならない。第三に、これは政治的問題であるが、他地区からのごみ搬送に市民が反対し施設立地が困難になることがある。自治体間の足並みの乱れによって必要経費の投入がなされないことも予想される。自地域内でのごみ処理はこれまでのごみ処理の原則であった。ダイオキシンがいかに大きな問題であるとは言え、そう簡単にこの原則を崩してしまうことは危険である。ダイオキシン対策は処理能力が一日100t規模でも十分可能という研究もある。技術の進歩はめざましく、100t以下でも処理ができるという日も遠くないのではないか。ごみ処理上の最重要点のひとつは地域レベルでのごみ処理ではないだろうか。

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