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資源の持ち去り問題

容器包装リサイクル法以降、資源分別収集と集団回収との二重の回収ルートができたが、リサイクルの効率を高め、社会的コストを低減するためには、これらふたつの仕組みの補完関係を再構築することが望まれる。筆者らはその見直しの視点を「協働」ととらえ、官と民が協働して展開する集団回収を「協働型集団回収」と名付けた 。「協働」は新しい公共における地方自治のキーワードであり、従来は行政が独占的に行ってきた「公共」の領域を、市民やNPOなどの市民とともに担うことを言う。ここから敷衍して協働型集団回収とは「再生資源の市場性を積極的に活用し、地域の実情に合わせて、住民、資源回収業者、自治体が相互の役割を補完し合いながら、循環型社会の構築のために家庭から発生する資源を回収し、有効に活用する活動の体系」と定義しておきたい。実際いつかの事例に見るように、資源分別収集と集団回収は相互補完的であり、資源回収量の増大という点では、むしろ相乗効果を上げている。くりかえしになるが、リサイクルの社会的効率向上のためには、上記のような観点から資源分別収集と集団回収の補完関係の再構築が望まれるのである。資源分別収集の喫緊の問題として、「資源の持ち去り問題」がある。いくら集めても採算がとれないために行政が分別収集に乗り出したが、いつのまにか価格が上昇し、ステーションに出された「紙ごみ」は再び「有価物」となったために、これを持ち去る者が出てきた。さらに東京など大都市が資源分別収集を実施するようになると、ステーションに排出される古紙なども膨大な量にのぼるため、人員や機材を準備して組織的に持ち去りを行う業者が出現した。これが持ち去り問題の本質である。東京都は平成21年11月に区市町村、製紙メーカー、リサイクル業界など関係者による「古紙持ち去り問題対策検討協議会」を立ち上げた。推計によると平成21年度の都内の資源(新聞古紙)の持ち去り量は、4万2675トン、持ち去り率は、27・3%、被害額は、回収段階・行政コスト、回収古紙の価値を合せて約15億円に達している 。 持ち去り問題については、自治体が罰則つきの条例を制定したり、パトロールを強化するなどの対策が講じられているが、その被害は増加傾向にある。民間団体と回収業者が契約によって回収を行っている集団回収は、資源の売買をしているわけだから、これを勝手に持ち去る行為は明らかに窃盗罪になる。しかし資源分別収集の場合は廃棄する目的で出されたとみなされ、そこに排出された資源は所有者のいないものとなって即座に窃盗罪に問うことは難しい。つまり資源の持ち去り行為を刑法上の犯罪として取り締まることは、現実には難しい課題がある。

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