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戦後の廃棄物関連法の制定・施行

戦後日本において,廃棄物問題は,汚物による「公衆衛生の問題」として認識されていた。これ は,都市への人口の流入などによる廃棄物の排出量の増加と,化学肥料の普及を背景としてし尿処 理の問題が大きくなってきたことが原因と考えられる。そのような状況下で,昭和29年4月に「清 掃法」が公布され,7月に施行された。本法では,汚物を衛生的に処理し,生活環境を清潔にする ことにより,公衆衛生の向上をはかることを目的としていた。具体的には,清掃事業の実施主体を 全国の自治体に拡大し,市街地を中心とした汚物処理の区域を明確にすることで,廃棄物処理体制 の整備が図られた。また,本法において対象となる「汚物」を,「ごみ,燃え殻,し尿または犬, 猫,鼠等の死体」と定義している。本法の特徴としては,廃棄物は,処理しなければ,ハエや悪臭 の発生源となり,国民の健康に悪影響を与えるものとして見なされていたことである。 清掃法の施行後,昭和30年代から昭和40年代中頃にかけて,日本は高度成長期に突入する。この 時代は,三種の神器(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)に代表されるように,急速な経済発展を背景として, 大量生産・大量消費型の社会が形成された時代である。そして,大量生産・大量消費型社会の形成 を背景として,更なる新製品やニューモデルの登場が既存製品の陳腐化を早め,廃棄物の発生量の 増加に繋がった。また,工業や商業の都市への集中を伴い,地方から都市への人口流入が加速し, 都市部での大量の廃棄物発生をもたらした。一方では,生活の利便性の向上を背景として,大量の紙類やプラスチック類の排出がなされ,ま たカン・ビン類などの飲料容器や金属・ガラス類などの増加,そして家電製品の普及による大量の 粗大ごみの発生をもたらした。これは,発生する廃棄物の質の変化をもたらし,現状の自治体における処理技術では困難なものとなってきた。 さらに,事業者の生産活動から生じる廃棄物に係る問題も生じてきた。これは,建設廃材や有害 廃棄物など,自治体で処理困難な廃棄物を増加させた。それらの不適正処理は水質汚濁などの環境 汚染を引き起こし,公害問題を顕在化させた。な廃棄物問題に対処するために,昭和45年のいわゆる「公害国会」において,清掃法 は廃止され,新たに「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下,廃棄物処理法)」が制定された。 本法は翌年の9月末に施行され,これをもって現在の日本の廃棄物処理制度の基本的枠組みが形成 された。本法では,廃棄物は,事業者の生産活動から生じる廃棄物(産業廃棄物)と,それ以外の一 般廃棄物に区分し定義された。そして,汚染者支払い原則に基づいて,事業者による産業廃棄物に 対する処理責任が明確にされた。また,事業者は,物の製造,加工,販売などに際して,その製品, 容器などが廃棄物となった場合においてその適正処理が困難とならないようにしなければならない こととされ,事業者の責務が定められた。さらに本法では,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を 図ることを目的としている。このことは,清掃法においては衛生処理の観点だけから廃棄物処理を 行うことが規定されていたが,本法において初めて生活環境の保全という環境問題を意識した廃棄 物処理制度が構築されたことを意味する。

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